朝日放送ラジオ放送原稿


 今月から『河内キリシタンの繁栄と、その広が り』についてお話ししたいと思います。以前、この番組を通して語ったことをまとめ、「河内キリシタン人物伝」と、「野崎観音の謎」と 題してして二冊の本を出版しました。これらのラジオ放送や本を通して、「河内 はキリシタン信仰の聖地」として繁栄したことが一般にも認められるようになってきました。
 今回からは、「河内キリシタン」がどのように繁栄し、日本の各地にキリシタンの信仰が広がって行っ たのかをお話ししたいと思います。
 さて、今日は「『河内の教会から大坂城教会』への発展」と題してお話ししましょう。そのきっかけとなったのは、キリシタンを保護していた織田信長が、『本能寺の変』で明智光秀に殺 され、次に天下を取ったのは光秀を打ち取った豊臣 秀吉であったことは周知の事実ですね。
 当時のことを詳しく書いた宣教師フロイスは、その著書『日本史』の中で、「信長の没後、その家臣で羽柴筑前殿と称する者が天下の政治を司ることになった。彼は優秀な騎士であり戦闘に熟知していたが、気品に欠けていた」と、秀吉を紹介していま す。
 その秀吉は大坂城を築き、「浪速」(なにわ)を天下の中心地、首都となるように計画しました。その為に河内と摂津を天領としてキリシタン領主から取り上げました。河内キリシタンをフロイスは、「我が五畿内で有する最大にして最古、また最もよく組織されたものであった」と表現しています。
 高山右近も例外ではなく、毛利水軍から大坂を守るために明石船上(ふなげ)城を築かせ、そこの城主としました。さらにキリシタン大名の小西行長を 「海の司令長官」として室津と小豆島に配備し、毛利水軍の進撃から守るために二人のキリシタン大名を用いました。
 「本能寺の変」で、信長が秀吉と共に最も信頼していた家臣の明智光秀に殺された事は、戦国乱世の時代とはいえ、秀吉にとっては大きなショックであったと思われます。誰を信じて良いのか分らない乱世の時代に、決して裏切る事のない側近を配置しました。として用い、さらに大坂城の中では事務方の女性を キリシタンで固めました。キリシタン大名の高山右近や、高山右近の導きでキリシタンになった牧村長兵衛を近衛部隊長として用い、さらに大坂城の中では事務方の女性をキリシタンで固めました。
 秀吉は大坂城を中心に浪速の都市造をはじめました。天満橋の近くの城内の約百メートル四方の最も よい敷地を教会の為に提供してくれたのです。
 河内に建てられていた砂の美しい教会を移築して大坂城教会として用いられるようになりました。宣教師の報告では、「高台にある教会堂からは築城のために運び込まれる石材の運搬船が川をうめつくし、巨大な石垣の石を荷揚げする光景が見られた」 そうです。

 1584年に実質、秀吉と徳川家康との決戦・「小牧・長久手の戦い」に参加していた秀吉側の武将たちが一年近くの硬直状態の中で、特にJR小牧駅の少し東にある「二重堀(ふたえぼり)」で秀吉の武将・神子田(みこだ)半左衛門や細川忠興・黒田官衛らが陣を構えていました。その側にはキリシタン大名の高山右近、八尾城主・池田丹後守教正(のりまさ)、秀吉の親衛隊長の牧村長兵衛らが陣を敷いていました。
 この「二重堀(ふたえぼり)」の戦いで四條畷岡山・砂城主、結城ジョアンが戦死をしました。高山右近や河内キリシタン武将たちと彼らが交わり、戦いが引き分けになって大坂に戻りましたが、 1585年に大坂城教会として移築されていた教会で、黒田官兵衛や蒲生氏郷らの武将たちが次々と洗礼を受け、キリシタン大名として活躍しました。セスペデス宣教師の記録には「二百人以上の身分の高い侍たち」が大坂城教会でこの時期に洗礼を受けました。細川忠興の妻・玉子が大坂城の教会に行った時でもありました。洗礼を受けて細川ガラシャとして呼ばれるようになりました。謀反者(むほんもの)の明智光秀の娘として汚名をきせられていました 。が、キリシタンとして汚名を払拭するだけではなく、細川家からも尊敬される存在となりました。ここで河内キリシタンの信仰復興(リバイバル)の炎が、戦国時代の終りごろ、河内・摂津のキリシ タンから、大坂城教会を中心として小西行長だけでなく、黒田官兵衛や蒲生氏郷のような大大名と呼ばれる大名がキリシタンになりました。
 この時代から河内キリシタンや摂津・高槻キリシタンは大坂城教会のキリシタンとして(方の教会)として日本中に影響をもたらす存在となりました。
 戦国乱世の時代に生きた英雄も、永久に変わる事のない絶対真理を求め、死も恐れない生き方を復活の主と出会うことによって発見したと思います。

 今日の聖書の言葉
「あなたがたが新しく生まれたのは、朽ちる種からではなく、朽ちない種からであり、生ける、いつまでも変わることのない、神の言葉によるのです。
『人はみな草のようで、その栄えは、みな草の花のようだ。草はしおれ、花は散る。しかし、主の言葉は、とこしえに変わることがない』」第1ペテロ1:23-25


     この放送は2014年4月6日朝4:30から朝日放送ラジオから流れます。